寝付かない
健康に老いる人生を
 
当院では、生活習慣病、骨粗鬆症を中心に
皆様が寝付かずに健康に老いる人生を送れる様にお手伝いをしていきたいと思います。
 
我が国は世界第1位の長寿国となると共に、猛烈な勢いで「高齢化社会」を迎えようとしています。
厚生労働省の国民生活基礎調査によれば、寝たきり状態の主な原因は高齢による衰弱を除けば、第1位が脳血管疾患、第2位は骨折・転倒となっています。
この2つをあわせると寝たきり状態の原因の約半分を占めることになります。
 
1. 脳血管障害
脳血管障害、特に脳梗塞の原因としては、心房細動等を原因とする心原性脳梗塞(脳塞栓症)と、脳動脈硬化症から来る脳血管性脳梗塞(脳血栓症)の二つに大きく分けられます。
特に脳動脈硬化症を引き起こす疾患としては、生活習慣病である糖尿病、脂質異常症、高血圧症が挙げられるのです。また、これら生活習慣病は心臓の血管の動脈硬化にも関与していると言われます。心臓の血管の動脈硬化とは、即ち狭心症や心筋梗塞の発症に関与しております。
 
したがって脳血栓症と予防としては、まずは生活習慣病の予防や治療という事が大切になってくると思います。また、生活習慣病の是正は、そうした脳血管障害だけではなく、心疾患の防止にも効果があるという事になります。
 
では生活習慣病をコントロールする上で大切なものとは何でしょうか?
 
お薬によって治療していく事もそれは大事な事だと思います。しかしお薬さえ飲めば後は何をどうやっても問題ないのか?と言えばそうではありません。
糖尿病にしろ脂質異常症にしろ、高血圧症にしろ、昔は成人病と言われていましたが、今は生活習慣病と言われる様になって久しいです。
そうです。
これらの病気は聖人になれば起こってくる危険性がある病気ではなく、生活習慣に大きく係わっている病気なのです。ですから、これらの病気はお薬でコントロールするのではなく、生活習慣の是正でコントロールしていく病気なのです。
勿論生活習慣の是正だけでは落ち着かない状態もアルト思いますが、その時はお薬で適正値までコントロールしていくのが本来の病気のコントロールとなります。
 
血圧の薬や糖尿病の薬は、飲み始めたら一生飲み続けていかなければいけないから嫌だという方がよくいます。しかし生活習慣の是正により、投薬量が減少したり、中には飲まなくて良くなった方はいくらでもいます。
もう一度食生活や生活習慣を見直しながら、生活習慣病の予防、治療を一緒にしてみてはいかがでしょうか?
 
2. 骨折・転倒
高齢者では転倒による骨折が生活レベルの低下を招き、最悪の場合は寝たきり状態となるケースが増えています。
転倒しない様に住まいをバリアフリーにしたり、足が上がりやすいように太ももの筋力を鍛えるも大切ですが、転倒した際、骨折を起こしてしまう最大の原因は骨粗鬆症です。
骨粗鬆症は歳をとれば誰でも起こしてしまう、いわば老化現象だと考えている方も多いと思いますが、適切な対処をすれば骨粗鬆症を予防して、仮に転倒しても致命的な骨折を起こさずに済む事も充分期待出来ます。
 
骨粗鬆症は、一昔前までは、薬と言えばカルシウムを飲むだけ、と言うイメージがありました。しかし約20年くらい前から病気の実態が次々と改名され、今現在も新しい発見が相次いできております。単に骨粗鬆症と言っても、今やお薬の種類は10種類以上の治療法の選択が可能です。
現在の骨量の測定と、骨の新陳代謝の状態を血液検査で行う事により、その人に最も適した治療法が選べます。
また、骨粗鬆症は生活習慣病ではありませんが、生活習慣を改善する事で骨折の予防が出来るという事も言われています。それは、一言で言えば、短距離でもいいから「歩く」事です。
同じ骨量の方でも、歩く習慣がある方と歩く習慣があまりない方だと、転んでしまった場合、歩く習慣がある人の方が優位に骨折する危険性が下がっています。その事は、数字には表れない骨を強くして、骨折を予防する効果が現れている証拠にもなると思います。

当クリニックの理念
 
同じ病気でも、患者が違えばその対応法は変わります。
それは他に合併症があるかないか、その人の生活環境や性格によっても変わってくる事が考えられます。
 
 
医者になったばかりの頃、一人の患者に出会いました。
齢100にも至ろうとする小柄の老人が来院され、訴えは「座れない」。
 
見ると大量の腹水のため腹がパンパンに腫れ上がり、腹部が圧迫して確かに座る事もままならない状態。
腹水試験穿刺では血性で明らかに癌性腹水でした。
 
年齢を考えると恐らく末期の癌で手術適応もなく、いかなる手立てを行っても助からないと考えられる状態でした。
ならば患者の訴えだけでもを取り除こうと、2リットルほどの腹水を抜き取りました。
 
それでも推定まだ半分以上は残っている。
するとその後老人、「さすが先生だ、座れる様になった。有り難う、有り難う!」と大感謝、もうそのまま帰ってしまう勢いでした。
 
本当に喜んでもらっている、こんなに感謝してもらえるなんて・・・それが自分もなんだかとっても嬉しかったのを思い出します。
その後その老人は、胃カメラで末期の進行胃がんが判明し、肝臓にも巨大な転移がありました。
いくら座れる様になってもすぐにまた腹水がたまり同じ事になります。
 
家族に病状を説明、治療法がない事を伝えると、「本人がこんなに感謝している、どんな結果になってもいいから、先生の思ったとおりに何か治療を施してくれ」と嘆願されました。
 
何故こんな医者に成り立てのやつにこんな期待を、と思いつつ、ならばと思い少量の化学療法を開始しました。
すると老人は奇跡の回復を見る事となりました。
 
一ヶ月ほどで胃がんも肝転移も腹水も消失し元気に退院しました。
老人も家族もすごく感謝してくれた事は言うまでもありません。
 
その後その老人は癌を再発する事はなく、101歳で心不全で亡くなりました。
 
患者の病気は教科書通りにはいかない。勿論いい事ばかりではなく寧ろ悪い事の方が多い。
効くはずの薬が効かない、それは患者に問題があるのだろうか?
否、自分の治療に間違いがあるのだろうか?
この治療法は正しいのだろうか?日々その疑問と向き合っています。
 
その答えは必ず患者が出してくれます。
 
また、その時患者は感謝してくれているだろうか?
自分はその結果に満足出来ているだろうか?
その疑問、葛藤、苦悩、喜びこそが医師になった事への実感かもしれません。
 
これからも毎日この実感を感じ続けていくであろうし、感じ続けていかなければならないと思います。
 
その実感の質も日々変わっていくでしょう。
 
良く変わっていくか、悪く変わっていくかは自分次第。
 
精進の日々が続く事でしょうが、今はそれが生き甲斐でもあります。